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Vol.9 『人口減少社会という希望』を読む

2013年7月30日

 高齢化の中で死亡数の増加は今後も当面続くので、人口減少という現象は変えようがない。しかし、推計では、日本の人口は2100年には9000万人程度で安定することになっている。アメリカは「強い成長・拡大志向、小さな政府(低福祉・低負担)」という点に特徴づけられる社会だが、むしろ社会保障や環境に軸足を置き、「持続可能な福祉国家」と呼べるような成熟社会を志向しているのヨーロッパの方が、はるかに生活の豊かさが感じられ、また人々の「幸福度」も高いのである。そうした価値のありようを含めて、人口減少社会という《希望》が本書のなかで描かれる。経済、哲学、宗教、科学、人類史をも包括する専門書であリ、その内容をまとめて示すことはとてもできないが、いくつか箇条書きに抜き出すことで、本書に展開される多くのテーマの一端を感じていただければと思う。

・ 「コミュニティ経済」

 成長・拡大の時代とは、本来その基盤にコミュニティひいては自然を土台としてもっているはずの市場経済が、コミュニティや自然から乖離し、際限なく“離陸”してきた時代であった。もともと「経済」という営みの中には、ある種の互酬性あるいは「相互扶助」的な要素が含まれていた。経済をもう一度コミュニティや自然とつないでいくことが、「コミュニティ経済」であり、これからの時代の基本的な潮流になっていくだろう。

・ ローカル化が日本を救う

 これからの時代は、ローカルなレベルから出発してできる限りそこでヒト、モノ、カネが循環するような社会を作り、そこからナショナル、リージョナル、グローバルと積み上げていくという方向や政策が重要。 “マクドナル化” とほぼ同義である「グローバリゼーション=均質化」ではなく、大事なのは、地球上の各地域の「ローカル」な多様性やその価値を積極的に認めていくような思想やその原理である。

・ 「3大政党プラス“緑”」へ

 成熟社会における政党構造として、端的に言うと、保守主義政党、自由主義政党、社会民主主義政党、“緑”ないし環境政党がある。3大政党のトライアングルに対して、“緑”がクロスしていくという、イギリスやドイツなどの海外の状況から、緑の福祉国家/福祉社会という社会の方向性が示される。

・ 「ケア(関係性)としての科学」

 産業公害における水俣と、原発事故における福島、二つのことは、「経済成長のための科学」というあり方に深く関連している。人間と自然、個人とコミュニティ・社会の間の 「関係性」 に注目し、それらをつないでいくような科学のあり方が構想されていくべきではないか。

 水車が回る小水力発電を柱の一つとした地域再生の試みなど、「自然エネルギーコミュニティ構想」のなかでの描写に、《希望》が見える。現実に私たちにできることへ向けて、踏み出すことの勇気と力を与えてくれる本である。

本の写真

『人口減少社会という希望  コミュニティ経済の生成と地球倫理』 広井良典著 朝日選書

スープのよろずや「花」代表 伊藤真美

印刷用Vol.9

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From → 通信

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